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MM2H

MM2Hとは|4階層の条件と、申請前に必ず知るべき5つの誤解

最終更新日:2026-08-07

MM2H(Malaysia My Second Home)は、働かずにマレーシアに長期滞在するための代表的な制度です。ただし2021年以降、要件の改定が続いており、日本語で流通している情報には古い数値や他制度との混同が数多く残っています。この記事では、まず2026年時点の正しい要件を提示し、そのうえで日本人が実際に判断を誤りやすい5つの論点を、資金計画に効く順番で解説します。

MM2Hの現在の要件:4階層とその条件

MM2Hは観光芸術文化省(MOTAC)が所管する長期滞在プログラムです。2024年6月に発表された3階層制(シルバー・ゴールド・プラチナ)に、ジョホール州の経済特区を対象とするSEZ階層が加わり、2026年時点では4区分で運用されています。

各階層の要件は以下のとおりです。定期預金の通貨がUSDである点、物件購入義務が併存する点を確認してください。

共通要件として、申請者は25歳以上(SEZは21歳以上)。海外所得の証明要件は撤廃されています。60歳未満の申請者には医療保険の加入が求められます。

MM2Hの4階層(2026年8月時点)
階層定期預金物件購入義務ビザ期間参加費就労
SEZUSD32,000(50歳以上)/USD65,000(21〜49歳)RM50万以上(指定エリア)10年RM1,000不可
シルバーUSD150,000RM60万以上5年RM1,000不可
ゴールドUSD500,000RM100万以上15年RM3,000不可
プラチナUSD1,000,000RM200万以上20年RM200,000

誤解1:定期預金は「RM50万」ではない

最も広く流通している誤りがこれです。日本語のブログや比較サイトには、いまも「MM2Hのシルバーは定期預金RM50万」という記述が残っています。これは誤りです。

連邦のMM2Hの定期預金はUSD建てで、シルバーはUSD150,000です。RM50万という数字は、サラワク州が独自に運用しているS-MM2H(2025年1月施行の改定後)の要件であり、まったく別の制度です。

この混同は資金計画を根本から狂わせます。RM50万は円換算でおおむね1,950万円(1RM=39円)ですが、USD150,000は2,000万円台後半です。さらにUSD建てということは、円で資金を用意する場合に円→USDの為替リスクを負い、物件購入時にはリンギット建ての支払いが発生するため、2つの為替が絡みます。

検討時は、必ずMOTACの公式資料で通貨と金額を確認してください。日本語の二次情報だけで資金計画を組むのは危険です。

誤解2:物件購入義務を満たせば買える、わけではない

2つ目の誤解は、物件購入義務の位置づけです。「シルバーならRM60万の物件を買えばよい」と理解している方が多いのですが、正確ではありません。

MM2Hの物件購入義務は連邦のプログラムの参加条件です。一方、各州は外国人に対して独自の最低購入価格を設定しています。連邦のプログラムは州の土地・不動産規制を上書きしないため、両方が適用され、高いほうが実際の下限になります。

具体例で考えます。シルバーでクアラルンプールに住宅を買う場合、MM2H側の義務はRM60万以上ですが、クアラルンプールの外国人最低購入価格はRM100万です。したがって実際に購入できるのはRM100万以上の物件だけになります。「MM2Hを取ればRM60万で買える」わけではありません。

SEZ階層のRM50万という水準が成立しているのは、対象が指定エリアの物件に限定され、その区域では州の基準額の扱いが通常と異なるためと説明されています。適用関係は個別性が高いため、契約前に州政府または現地の弁護士に直接確認してください。

誤解3:滞在義務90日と税務の182日は別の話

3つ目は、滞在日数をめぐる混同です。

MM2Hには年間の最低滞在日数(半島マレーシアで暦年累計90日)が課されますが、これが適用されるのはおおむね25〜49歳の申請者で、50歳以上には最低滞在日数の定めが置かれていません。「MM2Hは年90日住まないといけない」という説明は、年齢によっては当てはまりません。

そしてこの90日を税務と混同しないでください。マレーシアの所得税法では、暦年で182日以上滞在すると税務上の居住者と判定されます。ビザ制度上の滞在義務と、税法上の居住者判定は、まったく別の基準に基づく別の制度です。

実務上の帰結はこうです。MM2Hを取って年90日だけ滞在しても、マレーシアの税務居住者にはなりません。税務居住者でなければ、居住者向けの累進税率や外国源泉所得の免税措置は使えず、マレーシア源泉所得には非居住者として一律30%が課されます。「MM2Hを取れば節税になる」という単純な図式は成立しません。

加えて、日本側で非居住者と認められるかは日本の税法で別途判断されます。日本に住民票や生活の本拠、収入源が残っていれば、日本の課税は続きます。税務を目的にMM2Hを検討している場合は、渡航前に日本の税理士に必ず確認してください。

混同されやすい3つの日数基準
基準日数根拠効果
ビザ免除滞在最大90日入国管理観光・商用の訪問が可能
MM2H滞在義務年90日(25〜49歳)MM2Hプログラム規約ビザ維持の条件
税務居住者判定年182日所得税法 Section 7累進税率・各種免税の適用

誤解4:MM2Hは永住権ではない(印紙税8%の対象)

4つ目は、MM2Hの法的性格です。MM2Hは長期滞在の資格であって、マレーシア永住権(PR)ではありません。この違いが最も金額に効くのが、不動産取得時の印紙税です。

2026年1月1日以降にMOT(譲渡証書)を締結する非永住権の外国人は、住宅用不動産の取得に対して一律8%の印紙税を負担します。改定前は4%でした。MM2Hは永住権ではないため、保有者もこの8%の対象です。

物件価格RM100万なら印紙税だけでRM8万。これに弁護士費用や登記費用が加わり、初期費用は物件価格の約9〜10%が目安になります。「MM2Hの物件購入義務を満たすために買う」という発想で価格の下限だけを見ると、この初期費用に加え、保有中の管理費・評価税、売却時の不動産譲渡益税(RPGT)が抜け落ちます。

また、MM2H経由で購入した物件について、一定期間の転売制限が課される運用が案内されています。出口を含めた資金計画を、購入前に必ず立ててください。

誤解5:自分で申請できる、わけではない

最後に手続きです。MM2Hの申請は、MOTACの免許を受けた会社を通じてのみ受け付けられます。個人での直接申請はできません。

免許会社の一覧はMOTACのサイトで公開されています。依頼先が掲載されているか、免許が有効かを自分で確認してください。日本語で営業している業者であっても、MOTACの免許を持っていなければMM2Hの申請代行はできません。

ここで区別しておくべきことがあります。MM2Hの申請代行に必要なのはMOTACの免許であり、不動産の仲介に必要なのはLPPEHの登録です。制度も所管官庁も別です。ビザと物件を同じ窓口に相談する場合は、両方の資格を確認する必要があります。

定期預金については、承認後、物件購入・教育・医療・観光を目的とする場合に限り最大50%まで引き出せます。残額はビザの有効期間中維持する必要があります。

申請前のチェックリスト

以上を踏まえ、申請を決める前に確認すべき項目を整理します。

特に重要なのは、購入前に賃貸で住んでみることです。通勤・通学の経路、渋滞の実際、買い物のしやすさ、医療機関との距離は、内見や短期滞在では把握しきれません。マレーシアの賃貸は初期費用が家賃の約3.5か月分で家具付きが標準のため、試住のコストは相対的に低く抑えられます。

要件は改定が続いています。この記事の内容は2026年8月時点のものです。申請前には必ずMOTACの公式資料と認可エージェントで最新の条件を確認してください。

  • 定期預金の通貨と金額をMOTACの公式資料で確認したか
  • 購入予定エリアの「州の外国人最低購入価格」を確認したか
  • 印紙税8%を含む初期費用(物件価格の約9〜10%)を見込んだか
  • 滞在義務(年90日)と税務居住(年182日)を区別して計画したか
  • 日本側の税務・年金・健康保険の扱いを税理士に確認したか
  • 依頼先がMOTACの免許会社一覧に掲載されているか確認したか
  • 購入前に賃貸で試住する期間を確保したか

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出典

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よくある質問

MM2Hの定期預金はいくらですか?

USD建てで、シルバーがUSD150,000、ゴールドがUSD500,000、プラチナがUSD1,000,000です。SEZ階層は21〜49歳がUSD65,000、50歳以上がUSD32,000です。日本語記事にある「RM50万」はサラワク州の別制度(S-MM2H)との混同で、連邦のMM2Hはリンギット建てではありません。

MM2Hは何歳から申請できますか?滞在義務はありますか?

申請は25歳以上(SEZは21歳以上)です。年間の最低滞在日数(半島マレーシアで暦年累計90日)が課されるのはおおむね25〜49歳で、50歳以上には最低滞在日数の定めが置かれていません。なおこの90日は、税務上の居住者判定(年182日)とは別の基準です。

MM2Hを取れば安く物件を買えますか?

買えません。MM2Hの物件購入義務と州の最低購入価格は別の規制で、両方が適用され高いほうが下限になります。シルバー(義務RM60万)でもクアラルンプールで買うなら、州の下限RM100万を満たす必要があります。

MM2Hがあれば印紙税は安くなりますか?

なりません。2026年1月1日以降にMOTを締結する非永住権の外国人には一律8%の印紙税がかかります。MM2Hは永住権ではないため対象です。弁護士費用・登記費用を含めた初期費用は、物件価格の約9〜10%が目安になります。

MM2Hで節税できますか?

単純にはできません。マレーシアの税務居住者になるには暦年182日以上の滞在が必要で、MM2Hの滞在義務(年90日)を満たすだけでは税務居住者になりません。非居住者はマレーシア源泉所得に一律30%が課されます。また日本側で非居住者と認められるかは日本の税法で別途判断されるため、渡航前に税理士へご相談ください。

MM2Hは自分で申請できますか?

できません。MM2Hの申請はMOTACの免許を持つ会社を通じてのみ受け付けられます。免許会社の一覧はMOTACのサイトで公開されているため、依頼先が掲載されているか、免許が有効かを必ず確認してください。

定期預金は引き出せますか?

承認後、物件購入・教育・医療・観光を目的とする場合に限り、最大50%まで引き出せます。残額はビザの有効期間中維持する必要があります。

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