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マレーシア 就労ビザ

マレーシアの就労ビザ(Employment Pass)|2026年の新基準と申請手順

最終更新日:2026-08-07

マレーシアで働くにはEmployment Pass(EP)が必要です。そしてこの制度は2026年6月1日に大きく変わりました。最低給与基準の引き上げ、承継計画の必須化、そして審査の厳格化。この記事では、現在の要件を正確に押さえたうえで、申請の流れ、よくある不許可の原因、そして転職・退職時に何が起きるかまでを実務的に解説します。

EPの3カテゴリーと2026年6月の改定

Employment Pass(EP)は、マレーシアで専門職・管理職として働く外国人向けの就労許可です。雇用主がスポンサーとなって申請するため、まず内定を得ることが前提になります。

2026年6月1日以降に提出される新規・更新申請から、最低給与基準が引き上げられました。カテゴリーIは月給RM10,000からRM20,000へ、カテゴリーIIはRM5,000〜9,999からRM10,000〜19,999へ、カテゴリーIIIはRM3,000〜4,999からRM5,000〜9,999へ。実質的な下限が、従来のRM3,000からRM5,000に上がっています。

最も重要な実務ポイントは判定方法です。この金額は基本給(basic salary)のみで判定されます。住宅手当、交通手当、賞与、インセンティブ、残業代はいずれも算入されません。オファーレターの提示額が「総支給RM5,500」でも、基本給がRM4,500ならビザは下りません。

さらにカテゴリーIIとIIIでは、雇用主による承継計画(succession plan)の提出が必須化されました。これは「この外国人の職務を将来マレーシア人に引き継ぐ計画」を示す書類です。カテゴリーIのみ免除されます。

Employment Passの3カテゴリー(2026年6月1日以降)
カテゴリー最低基本給最長有効期間承継計画家族帯同
カテゴリーI月給RM20,000以上最長10年(通常5年ごと更新)不要
カテゴリーII月給RM10,000〜19,999最長10年必須
カテゴリーIII月給RM5,000〜9,999最長5年必須制限あり(要確認)

申請の流れ:ESD Onlineから雇用主が申請する

EPの申請は本人ではなく雇用主が行います。個人で直接申請することはできません。

手順は大きく3段階です。第1段階として、雇用する企業が移民局の外国人サービス課(ESD:Expatriate Services Division)に登録し、Expatriate Post(外国人ポスト)の承認を得る必要があります。この段階で企業側の要件(払込資本金、事業内容、外国人雇用の必要性)が審査されます。企業がESD未登録の場合、ここから始めるため時間がかかります。

第2段階が、ESD Online(旧MyXpats)を通じたEP申請です。候補者のパスポート、学歴証明、職務経歴証明、オファーレターなどを企業がアップロードします。加えて、2026年の枠組みでは労働局(JTKSM)による承認が求められる運用となっており、カテゴリーII・IIIでは承継計画も提出します。

第3段階が承認後の手続きです。承認レター(Letter of Approval)が発行されたら、パスポートへのビザ貼付(エンドースメント)を行います。国外から入国する場合はVDR(Visa with Reference)の手続きが必要になることがあります。

処理期間:公称5営業日、実態はもっとかかる

処理期間については、公称と実態に差があるため両方を把握しておく必要があります。

ESDのClient Charter(サービス基準)では、承認プロセスは5営業日とされています。実務上は、書類がすべて揃った状態でのStage 1(承認レター発行)まで、おおむね5〜10営業日というのが標準的な目安です。

ただし実際の案件では大きくぶれます。18営業日かかった事例や、6週間を超えても動きがないという報告もあります。企業のESD登録やExpatriate Postの承認から始める場合は、さらに前段階の時間が加わります。

遅延の最大の原因は書類の不備です。学歴証明の認証、職務経歴証明の記載内容、パスポートの残存期間、写真の規格といった細かい要件で差し戻しが発生します。

実務的な結論として、入社予定日から逆算する場合は最低でも2か月、企業がESD未登録なら3〜4か月の余裕を見てください。「来月から働き始める」という前提で退職の意思表示をするのは危険です。

必要書類とよくある不許可・遅延の原因

候補者側が用意する書類は次のとおりです。企業側が用意する書類(登記関係、財務書類、組織図、承継計画)は雇用主が対応します。

よくある不許可・遅延の原因を挙げます。第一が基本給の不足です。前述のとおり判定は基本給のみのため、手当込みで基準を満たしているつもりでも不許可になります。オファー段階で必ず内訳を確認してください。

第二が学歴・職歴と職務内容のミスマッチです。EPは専門職・管理職向けの制度のため、担当する職務に見合う学歴(通常は学士以上)と実務経験が求められます。職務経歴証明書に、応募ポジションに関連する業務内容と在籍期間が明記されているかを確認してください。

第三が書類の認証不備です。海外発行の学位証明については、認証が必要になる場合があります。日本の大学の卒業証明書は英文で取得し、必要に応じて公証を受けてください。

第四がパスポートの残存期間です。申請時点で十分な残存期間(一般に18か月以上が望ましいとされます)がないと、発給されるビザの期間が短縮されるか、更新を求められます。

  • パスポート(全ページのコピー。残存期間は長いほうが安全)
  • 学位証明書・卒業証明書(英文。必要に応じて認証)
  • 職務経歴証明書(英文。職務内容と在籍期間の明記が必要)
  • オファーレター/雇用契約書(基本給の明記が必須)
  • 履歴書(英文)
  • 証明写真(規格は移民局の指定に従う)
  • (該当する場合)資格証明書・免許

家族帯同と、EPに紐づく制約

EP保有者は、配偶者と子をDependent Pass(扶養家族パス)で帯同できます。ただしカテゴリーIIIについては、家族帯同に制限が設けられる場合があるため、申請前に最新の運用を確認してください。

Dependent Passは就労を許可するものではありません。配偶者がマレーシアで働きたい場合は、自身でEPを取得するか、就労が可能な他の資格に切り替える必要があります。

そしてEP最大の制約が、勤務先に紐づくという点です。EPは特定の雇用主と職位に対して発給されるため、転職する場合は新しい雇用主による再申請が必要になります。自動では引き継がれません。

退職するとEPは失効します。一定期間内に出国するか、他の在留資格に切り替える必要があり、Dependent Passで帯同している家族の資格も同時に影響を受けます。

実務上の帰結として、日本のように「入社してみて合わなければすぐ転職」という動き方は取りにくくなります。最初の会社選びの重要度が日本より高い、と理解してください。

EPが取れない場合の代替手段

基本給RM5,000のオファーが取れない場合、いくつかの代替ルートがあります。

第一にDE Rantau(デジタルノマドパス)です。海外企業からの年収USD24,000以上(IT・デジタル職以外はUSD60,000以上)が条件で、マレーシア国内企業からの収入は認められません。有効期間は3〜12か月で1回更新、最長24か月です。マレーシアに住みながら海外の仕事を続けたい場合に適します。

第二にProfessional Visit Pass(PVP)です。海外の雇用主に雇用されたまま、マレーシア国内で一時的に業務を行う場合の資格で、期間は限定されます。

第三に、自分で法人を設立してEPを取得するルートです。ただしマレーシアの法人設立には払込資本や居住取締役の要件があり、外資比率によっては税率面の優遇を失います。単にビザ取得のために法人を作るのは、コストと手間の面で合理的とは言えません。

第四に、資産があればMM2Hです。ただし就労が認められるのはプラチナ階層のみで、シルバー・ゴールド・SEZでは働けません。

自分の状況でどのルートが現実的かの整理は、無料相談でお手伝いします。

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出典

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よくある質問

マレーシアの就労ビザの最低給与はいくらですか?

2026年6月1日以降の申請では、カテゴリーIが月給RM20,000以上、カテゴリーIIがRM10,000〜19,999、カテゴリーIIIがRM5,000〜9,999です。実質的な下限は基本給RM5,000。判定は基本給のみで、住宅手当・交通手当・賞与・残業代は算入されません。

就労ビザは自分で申請できますか?

できません。雇用主がスポンサーとなってESD Online(旧MyXpats)から申請します。前提として、雇用する企業が移民局の外国人サービス課(ESD)に登録し、Expatriate Post(外国人ポスト)の承認を得ている必要があります。

就労ビザの取得にどれくらいかかりますか?

ESDのサービス基準では5営業日、実務上は書類が揃った状態でStage 1まで5〜10営業日が標準的な目安です。ただし18営業日かかった事例や6週間超の報告もあり、企業がESD未登録の場合はさらに前段階の時間が加わります。入社予定日から逆算するなら最低2か月、企業がESD未登録なら3〜4か月の余裕を見てください。

総支給がRM5,000あれば就労ビザは取れますか?

取れません。判定は基本給のみです。総支給RM5,500でも基本給がRM4,500なら基準を満たさず不許可になります。オファーを受ける段階で、必ず基本給の内訳をオファーレターの文面で確認してください。これが不許可の最も多い原因です。

家族を連れて行けますか?

EP保有者は配偶者と子をDependent Passで帯同できます。ただしカテゴリーIIIでは家族帯同に制限が設けられる場合があるため、申請前に最新の運用を確認してください。なおDependent Passは就労を許可するものではなく、配偶者が働くには自身でEPを取得する必要があります。

転職や退職をしたら就労ビザはどうなりますか?

EPは特定の雇用主と職位に紐づくため、転職時は新しい雇用主による再申請が必要で、自動では引き継がれません。退職するとEPは失効し、一定期間内に出国するか他の在留資格へ切り替える必要があります。Dependent Passで帯同している家族の資格も同時に影響を受けます。

基本給RM5,000のオファーが取れない場合はどうすればよいですか?

代替として、海外企業からの収入があるならDE Rantau(年収USD24,000以上、最長24か月)、海外雇用主のまま一時的に業務を行うならProfessional Visit Pass、資産があればMM2H(ただし就労可はプラチナのみ)があります。日本語だけを売りにせず、経理・IT・営業などの専門スキルと組み合わせてRM5,000以上のポジションを狙うのが本筋です。

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